野生動物×動物愛護管理法

野生動物であるハクビシンは捕獲(占有)しただけでは「愛護動物」とはならないが、飼育すると愛護動物となり得る

鳥獣保護管理法は「野生」動物を対象としている。野生とは、人と関わることなく常時山野等で捕食して自活している状態のことだ。

これに対し、 「人と関わりがある」動物を対象としているのが動物愛護管理法だ。例えば、 家庭動物(ペット)・展示動物(動物園や猫カフェなど)・産業動物(畜産や養鶏など)・実験動物(研究施設)など、人が飼育・養殖している「飼養」動物がその代表例だ。

従って、純粋な野生状態の下にある動物は動物愛護管理法でいう「動物」には含まれない。しかし、 狩猟や有害駆除に携わる者は動物愛護管理法についても知っておくべきである。 なぜなら、一見して野生動物か飼養動物かの区別が困難なことがあり、飼養動物のうち「愛護動物」を殺傷・虐待・遺棄してしまうと動物愛護管理法違反に問われかねないからだ。

動物愛護管理法でいう「愛護動物」とは、①「牛・馬・豚・めん羊・山羊・犬・猫・いえうさぎ・鶏・いえばと・あひる」の11種類の動物と、②「人が占有している、哺乳類・鳥類・爬虫類に属する」動物のことだ。
つまり、これら11種類の動物であれば無条件で、またそれ以外の哺乳類・鳥類・爬虫類であれば人が占有していること(事実上の支配下におくこと)を条件として「愛護動物」にあたるのだ。ただし、法令に定義はないが、上記のとおり飼養動物など「人との関わりがある」動物が前提であるから、野生動物は含まれない。

牛・馬・豚・羊・ヤギ・ニワトリ・アヒルには野生種はほぼいない(=飼養種しかいない)が、ウサギとハトには野生種も飼養種もいるためイエウサギとイエバトに限定されていると思われる。このことから、犬(イエイヌ)と猫(イエネコ)についても、所有者がいるペット(家庭動物)や、所有者・管理者はいなくても食餌を人に依存して市街地や村落を徘徊しているノライヌ・ノラネコは「愛護動物」として動物愛護管理法の対象(殺傷禁止)となり、これらが野生化して山野等で捕食し自活しているノイヌ・ノネコの状態になれば「野生動物」として鳥獣保護管理法の対象(狩猟など一定条件下で殺傷可能)ということになろう。

逆に、イノシシやシカなどの野生動物については捕獲(占有)しただけで「愛護動物」となることはないが、さらに飼育・養殖までしてしまうと飼養動物になり、「愛護動物」にあたり得ることに注意が必要である。限界事例としては、奈良公園のシカ(国の天然記念物=文化財でもある)や、広島平和記念公園のハトも「愛護動物」とされている。たとえ野生由来であっても、たとえ所有者・管理者がいなくても、食餌を人に依存していれば「愛護動物」にあたり得るのだ。

そして、動物愛護管理法の罰則は、主に第44条に規定されている次の3種類。
1 愛護動物をみだりに殺すか、傷つけた者 2年以下の懲役又は200万円以下の罰金
2 愛護動物に対し、みだりに虐待を行った者 100万円以下の罰金
3 愛護動物を遺棄した者 100万円以下の罰金

1の殺傷については、現在、法定刑の引き上げ(厳罰化)が検討されている。

2の虐待には、①衰弱させること、②適切な保護を行わないこと、③不衛生施設において飼養・保管することの3つが例として挙げられているが、法文上それぞれ次のように限定されている。
①の衰弱させることは、エサや水を与えない、酷使する、不健康・不安全な場所に拘束する方法に
②の適切な保護を行わないことは、自分が飼養・保管する、病気や怪我をした愛護動物に
③の不衛生施設は、自分が管理する、排泄物の堆積した施設か他の愛護動物の死体が放置された施設で

3の遺棄とは、平成26年12月12日環境省通知(自総発第1412121号)により、「愛護動物を移転・置き去りにして場所的に離隔することにより生命・身体を危険にさらす行為」とさている。ペットなど人の保護を受けないと生存できない動物については離隔された場所の状況がどうあれ飢え・疲労・交通事故等により命の危険に直面するから遺棄にあたり、ノライヌ・ノラネコや飼養された野生種など人の保護を受けなくても生存できる動物については体の状態や離隔された場所が命の危険にさらされるような状況でなければ遺棄にはあたらない、とされている。
もちろん、繁殖させた野生動物を自然に還すこと、傷病治療のため一時的に保護・飼養した動物を生息適地に放つことは問題ない。

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