迷惑ノラネコを殺してはいけないワケ

迷惑ノラネコといえども愛護動物

少し前のことだが、ノラネコがたびたび家に入ってきて台所や食卓を荒らして困っていたという男性が、 猫をオリに入れて川に沈め 、殺すつもりで放置して死なせたという事件があり、動物愛護管理法違反の疑いがあるとみて、警察から任意で事情を聞かれたという。

動物愛護管理法第44条では、愛護動物をみだりに殺し、または傷つけた者は、2年以下の懲役または200円以下の罰金に処する、と定めている。ノラネコが「愛護動物」にあたることには異論がない。

この男性は、ノラネコを殺すまでの様子をネットで中継し、ユーザーからの非難コメントに対して、「なんでイノシシとかシカを殺してるんだよ。なんで有害鳥獣駆除をしてんだよ。人間に悪さするから殺してるんでしょ。ノラネコも同じだろ」と主張していた、という。男性が言うように、人間に害悪を与えるようなノラネコは、イノシシやシカと同じなのだろうか。

イノシシやシカは野生動物であり、鳥獣保護管理法の対象である。飼育動物についての法律である動物愛護管理法の対象ではない。純粋な野生状態の下にある動物は「愛護動物」には含まれないからだ。

そして、たとえ人間に害悪を与えるのは同じあっても、鳥獣保護管理法の対象であるイノシシやシカなどの野生動物と、動物愛護管理法の対象であるイヌやネコなど人との結びつきが強い動物とでは、それらを殺すことの意味合いが違う。鳥獣保護管理法が守るものは主として生態系であり、動物愛護管理法が守るものは主として動物を愛する人の心と社会の平穏であって、法の目的がまったく異なるからである。

イノシシやシカなどは、野生において増殖し、生態系や農林水産業に被害を及ぼしているため、厳格な条件の下一定の場合に殺すことが正当化されている。これに対し、ネコをペットとして可愛がっている人が多いというのに、そのすぐそばでノラネコを平気で殺すような異常な人物がいたら、周囲に恐怖心を与え、社会の平穏は保たれない。それが、イノシシやシカを殺すこととノラネコを殺すことの意味合いの違いである。

ノラネコによる被害に困っている事情もわかる。自衛策に限界があることもわかる。飼い猫であれば所有者に損害賠償することができるが、飼い主のいないノラネコではそれもできない。それでも、殺すしかないと短絡的に考えることが、社会にどのような影響を与えるのかについて、知っておく必要がある。

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