狩猟ナイフ×銃刀法(刃物即用携帯罪)

オピネルの狩猟ナイフ

狩猟や有害鳥獣駆除は、ナイフやナタなどの刃物を携帯する正当理由になる。草木の刈り払いやロープワーク、獲物の止め刺しや解体など、刃物が必要となる場面はいくらでもあるからだ。しかし、家から猟場までの往復道中ならともかく、車に積みっぱなしにしてマイカー通勤途中に検問にあって車内から発見されれば、あれこれとスーツを着て弁解してみても通る見込みはほとんどない。刃物即用携帯罪(銃刀法第22条違反)である。

銃刀法上、刃渡り15センチ未満の片刃のナイフやナタなどは「刀剣類」にあたる余地はないから自宅で「所持」することはできる(あいくちと飛出しナイフについては長さは関係ないことに注意)。しかし刃がある以上は「刃物」にはあたるので、刃体の長さ6センチを超えるナイフやナタは、業務その他の「正当理由」がなければ自宅外で「携帯」することはできない(銃刀法第22条)。但し、刃体の長さ8センチ以下のはさみと果物ナイフで先端が丸いもの、8センチ以下の折りたたみ式ナイフで刃体の固定装置がないもの、7センチ以下の切出しは、刃体の幅と厚みによっては除外される。

ここで「刃物」とは、①その用法において人を殺傷する性能を有する、②鋼と同等の硬さがある刃のある器物で、③刀剣類にあたらないものをいう。アイスピックやペーパーナイフなど刃が付いていない(切れない)ものはあたらないが(この点が「刀剣類」とは異なる)、金属製である必要はなくセラミック製でもあたるとされる(この点でも「刀剣類」とは異なる)。

ここで「正当理由」とは、家の外で刃物を持っていても不思議ではなく、一般大衆(社会)に危険や不安感を与えることがない理由と考えればよい。アメリカと違って「護身用」では通らないことはいうまでもないが、「調理師ではないが普段から職場や車内で自ら調理して食事している」でも通らないことには注意が必要である。車上で生活したり、キャンピングカーで日本一周しているというのは正当理由にはならないのだ。そのような個人的事情を知る由もない他人から見れば、常に包丁を持ち歩く危険な人物でしかないからである。

ここで「携帯」とは、①日常生活を営む自宅や居室以外の場所で、②直接手に持つか身体に帯びるなどして「直ちに使用し得る状態」で、③ある程度の時間継続して身辺に置くことをいう。とくに②の「把持の要件」が重要である。たとえ外で持ち歩いていても、直ちに使用できる状態でなければ、単なる「運搬」であって、ここでいう「携帯」にはあたらない。つまり、「即用」できる状態で「携帯」した場合のみが銃刀法違反となるのである。判例にも、牛刀を小包で発送するために梱包して電車で郵便局まで持参した事案について、直ちに使用できる状態ではなかったこと(「運搬」にあたること)を理由に無罪としたしたものがある。そこで、私の造語ではあるが、刃物「即用」携帯罪というのが正しい。

このことから、ナイフやナタなどの刃物をキャンプや猟場まで持って行く際にも、刃体がむき出しにならないようサヤに収めるのはもちろん、できれば分解した上、取り出しにくいケースに入れて施錠するなどして、直ぐには使うことができない状態に厳重梱包しておくことが望ましい。これなら、うっかり車から降ろし忘れて検問にあった場合でも、単なる「運搬」であって「携帯」ではないと認めてもらえる可能性がある。

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