捕獲と殺傷

捕獲も殺傷も、野生鳥獣保護の観点からは同等の行為とされている

鳥獣保護管理法で、最も重要な条文を一つだけ挙げよと言われれば、次の条文になる。

第8条 鳥獣(=鳥類又は哺乳類に属する野生動物)及び鳥類の卵は、捕獲等(=捕獲又は殺傷)又は採取等(=採取又は損傷)をしてはならない。ただし、次の場合(許可捕獲・許可採取や狩猟鳥獣捕獲など)はこの限りでない。

ここで、「捕獲等」の定義が、捕獲「または殺傷」となっていることに、2つの点で注意が必要である。

1つめは、鳥獣を仕留めることができず半矢で逃げられた場合、「捕獲」には失敗しても「傷」は負わせているので「捕獲等」したことになり、第8条違反の既遂行為となることである。許可捕獲や狩猟鳥獣捕獲として適法に行われていれば問題ないが、そうでないと 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるべき犯罪行為である。野生鳥獣保護の観点からは、捕獲するのも殺すのも傷を負わせるのも同じことだからである。なお、発砲したが当たらなかった(傷も負わせなかった)場合は未遂となる。

2つめは、完全に鳥獣の動きをとめた場合、「捕獲」が完了しているので既に「捕獲等」したことになり、その後の「殺傷」については「捕獲等」にあたらず、鳥獣保護管理法の範疇外となることである。すなわち、捕獲後の殺し方に決まりはないことになる。この点、平成29年に募集されたパブリックコメントに対する環境省の回答では、「例えば、くくりわなに獣の脚部がひっかかっているものの、くくりわなの根付けを起点に自由に動き回れる状況等であれば、捕獲が完了していない状況であり、確実に止めさしができない可能性もあることから、弓矢等を用いることはできません。」とされている。確かに、そのような状態であれば、ワイヤーや獣脚の断裂もあり得る。つまり、完全に動きをとめる前は「捕獲」が完了していないので、その段階での「殺傷」については「捕獲等」にあたるが、完全に動きをとめて「捕獲」を完了した後であれば、禁止猟法とされている弓矢等であっても止め刺しに使えるということである。 もっとも、銃刀法や動物愛護管理法など他法令を遵守した上、「動物の殺処分方法に関する指針」(平成7年総理府告示第40号)に準じ、できる限り苦痛を与えない方法による必要があることはいうまでもない。

網や罠は基本的に殺傷を伴わない「捕獲」猟具であるのに対し、銃は基本的に捕獲を伴わない「殺傷」猟具である。銃で傷を負わせれば逃げられても「捕獲等」にあたる反面、網や罠で確実に逃げられない状態にした後の殺傷は「捕獲等」にはあたらないのである。

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